偏差値30からの生物基礎まとめ

生物基礎の解説を行いながら、高校生、受験生の学習をサポートするブログです。丁寧に解説しているので学び直しや初学者にも最適です。

コラーゲンを摂取してもコラーゲンになるとは限らない 【第14回】遺伝子の発現と生命現象

遺伝子のONとOFF

 生物の体はいろいろな種類の細胞からできていますが、この細胞の違いはどのようにして生じるのでしょうか、細胞の個性とDNAの関係を見ていきましょう。

 

f:id:shimasensei:20180303141444j:plain

細胞の分化と遺伝子

f:id:shimasensei:20180303141508j:plain

 ヒトは、最初は1つの受精卵から始まります。これが細胞分裂を繰り返して、大人になるまでに細胞の数は60兆個まで増加します。この時、細胞はただ分裂を繰り返すだけでなく、次第に特定の形や機能を持つように変化していきます。これを細胞の分化と言います。

 以前確認した通り、DNAは、細胞分裂の前に正確に複製されて、娘細胞に等しく分配されます。よって、分化しても、それぞれの細胞には受精卵の時と同じDNAが入っていることになります。

 それでは、どうして同じDNAを持っているのに、このように細胞は分化していくのでしょうか。実は、その鍵を握るのは遺伝子のONとOFFなのです。

 

遺伝子のON・OFFの仕組み

f:id:shimasensei:20180303141554j:plain

 ヒトの場合にはおよそ2万個の遺伝子を持つことがわかっています。これらの遺伝子の中にはほとんど全ての細胞の中ではたらいているものもありますが、特定の細胞や必要な時にだけはたらく遺伝子も少なくありません。例えば、赤血球になるための遺伝子や、筋肉になるための遺伝子、皮膚の遺伝子、目の水晶体の遺伝子などがあります。

 例えば、皮膚になった細胞では、皮膚の情報を持った遺伝子以外は封じ込められていて、皮膚の情報を持った遺伝子だけがはたらいている。つまり、皮膚では皮膚の遺伝子だけがONになっていて、それ以外の遺伝子はOFFになっているのです。このように、それぞれの細胞の中にあるDNAは全て同じでも、遺伝子のONとOFFを調節することで、様々な種類の細胞が形作られています。

 

だ腺染色体

f:id:shimasensei:20180303141637j:plain

 遺伝子のONとOFFは、顕微鏡で容易に観察することができます。ハエユスリカ幼虫のだ腺(だ液を分泌するところ)の細胞にあるだ腺染色体は、通常の染色体の200倍ほどの太さがあり観察しやすいため、実験によく用いられます。遺伝子がONになっている所では、DNAが広がって見えるパフという構造が見られます。

 

パフ

f:id:shimasensei:20180303141655j:plain

 だ腺染色体のところどころにはDNAが広がって見えるパフという構造があります。ここではDNAがほぐれて転写が活発に行われています (mRNAが盛んに作られている)

 

遺伝子の発現

f:id:shimasensei:20180303141953j:plain

 

 細胞の特徴を決めるのはタンパク質です。遺伝子のONとOFFによって、作られるタンパク質の種類が変わることによって、細胞のはたらきも変化していくのです。

 DNAの遺伝情報をもとにタンパク質が合成されることを、遺伝子の発現と言います。

f:id:shimasensei:20180303141715j:plain f:id:shimasensei:20180303141739j:plain

 赤血球の中ではヘモグロビン遺伝子が発現し、酸素を運ぶヘモグロビンタンパク質が作られます。その結果、赤血球は酸素を運ぶことができるわけです。

 筋肉の中ではミオシン遺伝子が発現し、筋肉を収縮させるミオシンタンパク質が作られます。その結果、筋肉は収縮することができるのです。

f:id:shimasensei:20180303142153j:plain f:id:shimasensei:20180303142215j:plain

 同じように、皮膚ではコラーゲン遺伝子が発現し、コラーゲンを作ります。また、水晶体ではクリスタリン遺伝子が発現し、クリスタリンを作っています。

 このように、各細胞では、各細胞を特徴付ける遺伝子を発現させ、その細胞に必要なタンパク質を合成しています

f:id:shimasensei:20180303142458j:plain

f:id:shimasensei:20180303142512j:plain

 

 最後にもう一度確認したいのは、タンパク質は、各細胞で作られるということです。例えば、お肌のたるみを抑えるためにコラーゲンドリンクが良いと聞いて、一生懸命にドリンクを飲んでいる人がいるとします。コラーゲンはタンパク質です。胃や小腸でアミノ酸にまで分解され、吸収されます。

 このアミノ酸の使い道は誰が決めるのでしょうか。そうです細胞自身です。

 この成分が赤血球に吸収されればヘモグロビンを作る材料として使われるし、筋肉に吸収されればミオシンを作るのに使われます。よって、このコラーゲンドリンクは、タンパク質の材料を供給するという意味では意味があったとしても、残念ながら必ずしも体内でコラーゲンに変換されるわけではないのです。

 

以上です。お疲れ様でした。